コンサートシリーズ

《ツァイトプンクト》

第2回[ラウムコンプ]

 

薬師川 千晴(画家)

薬師川さんは以前、「時間芸術である音楽に憧れがある」とおっしゃっていました。今回は薬師川さんの絵画が並ぶ空間で新曲が演奏されます。最初にこの企画の内容を聞かれた時どのようなことを思われましたか?

 

― 今回このお話を頂いた時はとてもわくわくしました。以前から憧れのある音楽と、まして私の作品から作曲していただいた曲を絵の前で生演奏していただけるなんて、願ってもない企画です。

絵画と音楽の一番の違いはそれぞれの持つ時間にあると私は思います。例えば時間を過去ー現在ー未来と仮に表現するならば、絵画をしていて私が一番信頼出来る時間は過去です。絵画は画面に色をのせるとその筆跡が残り、作家が向き合った時間が痕跡として留められていきますよね。この意味において、絵画とは、完成された時にはすでに全ての時間が画面に内包されているという点で、過去と密接な関係にあると思います。

 

しかし音楽、特に生演奏を聴いている時、私は現在ー未来という時間を強く感じます。演奏者が生身の人間だからこそ、次の音が鳴らないかもしれない緊張感や、音が一瞬一瞬を繋いで、今この瞬間に聴こえては無くなっていくあの生々しさにとても憧れがありました。

今回の企画では私の作品のもつ時間と、音楽のもつ生々しい時間とが対峙しあったとき、どのような空間になるのか、とても楽しみです。

 

実際に作曲家とコンタクトを取り、どのようなやり取りがありましたか?

 

― 作曲家のお二人には、私が今まで作ってきた作品や、制作行程、手を動かしてる内に考えた事などをお話しました。分野が違うので、最初はどうやって言葉で伝えたらいいか不安でしたが、感覚的な言葉や曖昧な表現をちゃんと汲み取っていてだき、とても安心してお話する事が出来ました。

 

ギャラリーCASOは広大な空間で有名ですが、画家として、この空間の壁をご自身の作品のみで埋めるというのはどのような感覚ですか?

 

― 正直言って吐きそうなくらいプレッシャー(笑)ですが、以前から天井の高い広い場所で、鑑賞者がゆっくり作品と向き合える空間を作りたいと思っていたので、不安も大きいですが願いが叶うことが本当に嬉しく楽しみです。

 

今回RAUM KOMPでは「右手と左手のドローイング」シリーズをメインの部屋に置かれます。このシリーズをメインに選んだ理由を教えて下さい。

 

― 最初の質問でも触れましたが、絵画をしていると過去と向き合う事が多いです。特に今までの作品は、様々な工程を経て時間をかけて作るものが多かったのでなおさらでした。

しかし、時間をかける事で失われる感覚もあるんじゃないかなと感じ、今までにない即興性のあるシリーズを制作したところ、とても音楽と相性がいいのではないかと思い、メインに持ってこようと決めました。